IC インフォームドコンセント

説明をおこなって同意を得ることを持って、インフォームドコンセント(日本医師会は「説明の下での同意」と訳しておりました)が得られたと考えることは全く誤りです。診察をはじめ、CTやレントゲン、模型分析などを行いこれらの結果に基づいた病状や複数の治療法を説明し、質問などを繰り返したうえで、これら内容を書面でお渡しし、帰宅後にゆっくりと患者さんご自身に治療法を選択もしくは保留、転医を決定していただくことが必要です。あくまでも、患者さんが後で後悔しないように、客観的かつ十分な情報を提供したうえで治療法を自己決定をしていただく必要があるかと思います。インプラント治療を行ったこともないし今後も行うつもりもない歯科医師の中には、インプラント治療そのものに懐疑的、場合によっては敵対的となっている方もおりますし、他方講習会などを受けてインプラント治療をこれから開始し始めた先生は、危険性困難性を理解せずに難症例のインプラント治療や新しい器材を用いた治療をとても積極的に患者さんに勧めるかもしれません。
インプラント治療が安全である、危険であるとの議論をする前に、安全であるためには、術前・術中に歯科医師は何を行うべきか、患者さんには術前術後に何をお願いすべきか治療計画段階で、説明し理解いただく必要があります。
また、「手術同意書」なる文面に手術の結果について異議を申しませんなる誓約を求めることは、医療側をあらかじめ守ろうとする詭弁に過ぎません。患者さんには、担当歯科医師による医療行為のミスが原因で何らかの障害を受けたのであれば、損害賠償請求権があるのは当然です。医療側のミスの有無にかかわらずに、患者さんが治療経過や治療結果について何らかの不満や不明点を申し出られれば、真摯に答える義務があることは自明です。もちろん、治療方法や、治療費用に関する同意書は、この限りではありません。

EBD Evidence-Based Dentistry 科学的根拠に基づいた歯科治療 

科学的根拠とは、
1)治療に関する原因と結果が一定程度解明されていること。
2)動物実験による確認
3)臨床追跡調査
4)学術誌での科学論文としての発表

の条件を満たしたものと考えられます。3)の臨床追跡調査一つ取ってみても、民族性や性差、年齢差、また医療機関や医師の技量をも考慮しなければなりませんから、世界規模での一定数以上の数の医療機関による一定以上の症例数の調査が必要となります。しかし、これら1)〜4)を満たした治療(EBD)は正しいのかと申しますと、これだけでもまだ不十分でして、下図にありますように、患者さんのご要望、臨床上の経験則に照らし妥当である必要があります。

evidence

 

 

最高裁平成13年11月27日判決は「乳癌の手術につき、乳房温存術が、いまだ当時臨床医の実践としての術式が確立していなかったとしても、、また担当医が採用できない治療法等であっても、患者の立場で患者の利益になるのであれば、医師はそのような治療法の存在を当然説明する義務(期待権の侵害)があり、当該説明をしなかったのは説明義務違反である」と判示し、医師の過誤を肯定しました。
これは、自己の乳癌治療について温存術式の治療方法を選択する患者の権利を侵害したという点で、医師の不手際(ミス)を肯定したものです。

 

エビデンスとは何か

患者の自己決定権は絶対か

エビデンスの無いものは治療法として認められないのか

エビデンスがあれば治療法として絶対か

複数のエビデンスは、互いに矛盾することはないのか

臨床の現場では、経験則こそが大部分である

失敗を知らない医療・失敗を経験する医療・失敗を繰り返す医療・同じ失敗を繰り返す医療・失敗を認めない医療・失敗とは何か・過失とは何か・


重大な過失とは何か・

説明責任を果たすとは何か
これについて最高裁平成13年11月27日判例は、「患者の治療のために手術を実施するにあたっては、診療契約に基づき、特別な事情のない限り、患者に対し、疾患の診断(病名と症状)、実施予定の手術の内容、手術に附随する危険性、他の選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務がある」と判示し、説明の範囲については広く、程度についても高度なものを要求しました。
この説明義務につき、誰が、という「説明の主体」、誰に、という「説明の客体」さらに、「説明の方法」「説明の時期」「説明の回数」「説明の範囲」「説明の程度」等が具体的に問題となる。単に、形式的に患者または家族からいわゆる「手術同意書」をとっただけでは、裁判の実務では歯科医の説明義務が肯定されることはない。歯科医は、説明の内容を具体的・個別的にビデオ・写真や書面に記載し、その説明の都度、患者に具体的な治療内容・方法を具体的に理解してもらい、これを患者に選択してもらう必要(東京地裁・平成12年12月25日)がある。なぜなら、治療は歯科医と患者の能動的な共働作業で、患者は単に歯科医の独善的な治療の対象ではないからです。


診査の意義と診査のリスク説明⇒診査⇒診査結果報告書・説明 。
診査結果に基づく⇒病名・原因等の考察⇒治療法の選択肢の提案、他医療機関で行う治療方法も含めて説明。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引用・参考文献

科学的根拠から学ぶインプラント外科学 古賀剛人 クインテッセンス出版

判例時報