診査

A診査手順

術前診査:インプラント治療を検討したいという患者さんがみえれば、問診後に診査に入ります。

1、問診、相談、診査:すべての歯牙の歯牙硬組織検査(歯科治療の検査、虫歯の検査)歯周組織検査、必要に応じてレントゲン検査

2、精密診査、必要に応じてレントゲン診査、治療計画説明

3、CT撮影 (多数歯欠損の場合は診断用ステントを作製の上)

4、 撮影結果説明、治療計画書補充説明

治療内容が、多数の歯牙欠損に及び大きな骨の不足などもある場合・音楽家、歌手、アナウンサー、料理人などの職業上の問題のある方・事故外傷の方・インプラント手術の適応年齢に達しない若年者の方・金属アレルギーの方などは、さらにご本人、立会人の方に詳細な治療計画の説明が必要です。

B術中術後の診査

インプラントと骨の結合の程度を科学的に測定する診療機器

インプラントの成功を決定する大きな要素であるインプラントと骨の結合の度合いの判定には、従来レントゲンや経験のみに頼ることから、科学的根拠に裏付けられた測定法が第1世代〜第3世代と考案されてきました。
これら測定器は、@インプラント埋入後人工歯装着までの間の期間に使用します。A定期健診の際に、必要に応じて使用されております。

第1世代 ぺリオテスト:ドイツSIEMENS社の関連会社が開発発売した。測定値の安定性が乏しかった。とくにインプラントの骨結合度の測定にあっては、問題がありました。図のようにあくまでも、外から歯面に垂直に衝撃を与えた際の接触時間の差異を数値化したものです。

http://www.periotest.de/hst-abstand.gif
         第1世代

 

●下顎骨に埋入のフィクチャーに装着したアバットメントで測定したとき:−6から+2の範囲(平均値−2)
●上顎オッセオインテグレイテッド・インプラントの場合:−4から+5の範囲 (平均値0)

電子駆動方式によるハンドピースのタッピングヘッドが1秒間に4回歯面を打診します。歯周組織が健全であれば歯の安定度が大きく、歯面を軽打したタッピングヘッドは、より速く戻ります。歯槽骨や軟組織に異常があるとタッピングヘッドの接触時間が1ミリセカンドの何分の1か長くなります。1歯について16回打診を繰り返して(約4秒間)、微妙な接触時間の差異をマイクロコンピュータが正確に算出して平均値を−8〜+50の数値で「ペリオテスト値」として表示します。「この測定値は歯周支持組織の性状を示す生物物理学的パラメータとして再現性があり、その測定値は診断にとって信頼性の高いものです。 」「測定のしかたが不適当であると、取り消し機能が作動してデジタルと音声で警告しますから、誤った測定値が表示されることがなく、いつも正しい測定値が得られます。」とメーカーは説明しておりますが、骨と直接的に結合せずに、歯根と歯槽骨の間に一層の歯根膜が介在している天然歯にあっては信頼性の高い動揺度診査法といえます。他方、骨と結合するインプラントにあっては、第3世代のISQ値測定機がある現在で信頼性は不安定と考えます。(執筆者)

 

 

第2世代 骨結合検査装置 共振周波数分析器:インプラント専用としてはじめて開発された。L字型の装置に有線で電気を流し振動させ、ISQ値(インプラント安定指数:Implant Stability Quotient)を判定しました。形状が大きいため装着不可能な場合もありました。

     第2世代

第3世代:ISQ値 (implant Stability Quotient)インプラント安定指数:インプラントと骨の結合状態を診療の各段階で科学的に把握するために、オステルメンターを使用します。天然歯と骨の間にはコラーゲン繊維よりなる歯根膜が介在し、インプラントと骨のような直接の結合はありません。他方、インプラントと骨の結合はできる限りコラーゲン繊維などの軟組織の介在のない、強固な骨結合が理想とされます。初期固定(インプラント埋入時の骨とのかみこみ具合)の不良な場合に、負荷をかける時期を決定する参考となります。 インプラントの形態ごとに、きわめて小さなアルミ製ネジ(smart peg)を装着し、コードレスにて測定器本体と1−2mmほど近づけるだけで0から100までの数字でインプラントの安定度を表示します。インプラント埋入時は、ISQ値(骨結合度)50−60ー70が一般的値です。45以下は、再埋入もしくは治癒期間(インプラント埋入後に、インプラントと骨の結合を待つ期間)の延長の可能性があります。数値が高いほど、インプラントと骨の結合安定度が高いことになります。 非破壊的な測定が可能である点が優れております。

  第3世代  

 

製造メーカー
Integration Diagnostics 社
イエテボリ スエーデン

C定期診査

インプラントは金属製ですから、虫歯になりません。しかし、インプラント周囲に歯石や歯垢などが付着し、インプラント周囲の歯周組織(歯肉や骨など)に炎症や感染を生じさせ、ときに膿を持つことさえあります。

 

インプラント歯石

乳白色のものが歯石です。

丸い穴は、スクリューの穴ですが、最終的には、白いレジンが充填されます。インプラント周囲にも天然歯と同様の歯垢(プラーク:細菌の塊り)や歯石が付着します。歯を失ってインプラント治療を行っても、歯を失うに至った歯口清掃状況、食生活の改善を習慣化できなければ、最悪はインプラントを失うこととなります。歯を失うに至った過程を事後的にであれ、患者さんに説明する必要があります。インプラント特有の清掃方法や患者さん各自の歯並びに応じた清掃法の指導を受けて、定期検診に通院する必要性があります

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乳白色のべとつく粘稠性の液が膿です。

仮歯であっても、定期検診に通い、インプラント周囲のスケーリングをおこなってもらいましょう。

脳外科用の3Dカメラシステムで撮影しました。(三鷹光器)

定期診査によって、残存歯やインプラント部位の歯周組織や噛み合わせに新たな問題が生じていないかをチェックする必要があります。併せて、インプラント周囲を専用の清掃用具(インプラントに傷をつけないようにプラスチックレジンやシリコンの材質でできている手用スケーラー、エアースケーラーなど)で、スケーリング(歯石除去)クリーニングする必要があります。この清掃は、天然歯とは異なりますので、インプラント手術を行った医療機関で受けることが推奨されます。

除去したインプラント

左写真は、インプラント周囲炎によって、除去したインプラントです。

インプラント埋入後15年以上経過しておりましたが、この間定期健診、インプラントのスケーリングは行われていませんでした。

本製品は、透明なガラス棒のように見える京セラのサファイアインプラントでした。

インプラント周囲の腐骨 別の患者さん症例:感染したインプラントの周囲の骨は、腐骨となり、除去されました。幸いに、骨結合が完了していたために、インプラント本体の除去までには至りませんでした。インプラントがぐらついてはいませんでしたが、定期検診に通院していなければ、インプラントも喪失したかもしれません。


また、骨と結合しているインプラントは動かないものですが、周囲の残存歯が移動したり動揺することがあります。この様な噛み合わせの変化を放置しますと、インプラントの歯や残った歯に新たな問題を引き起こすことがあります。定期的に、すべての歯の咬合検査を受けてください。