構造と意義

 インプラントは、歯を失った部位に直径3〜7mm程の純チタン製ねじを顎骨の中に埋入し、骨との結合を2〜6ヶ月待って人工の歯を装着したものです。

インプラントのイラスト

従来の歯を失った部位の治療法である可撤式義歯(入れ歯)やブリッジと大きく異なる点は、骨に直接維持を求めますので、隣在歯(隣りの歯)に影響を与えませんし、機能回復の効果は、極めて高いものです。さらに1990年以降は、審美性が考慮されたインプラントシステムが普及し、徐々に審美性においても天然の歯のように作製が可能となり、現在にいたっています。

左図は、あご骨にしっかり結合したインプラントがアバットメントを中間に人工歯とねじにより結合されたものです。現在は骨と強固に結合するチタンのねじ状のものがインプラントの主流となっております。例外的には、ねじ状の構造ではない、単にシリンダー状のものや粒子状の表面構造のインプラントがありますが、世界で上位5社には入っておりません。

インプラントと骨の関係 左図:インプラントと骨は直接に結合し、天然歯と骨は歯根膜(コラーゲン線維:赤丸内)が、一層介在して、直接には接触しませんので、生理的動揺があります。また、天然歯は歯周病の進行によっては、この動揺が生理的な範囲を超えて病的動揺となることがあります。
インプラントは、健康であれば骨との間に全く動揺はありませんが、インプラント周囲に炎症・感染が波及しますと周囲骨が溶けて、突然に動き出します。この時はインプラントを除去するしかありません。この様な末期的な状態になる前に、天然歯およびインプラントを定期的に詳しく診査・メンテナンスする必要があります。

 

 

アバットメント 左図のようなねじ構造をいくつも重ねてインプラントに人工歯が連結されるのは、1つには治療終了後に交通事故や転倒事故であごを強く打撲した際に骨の中にある骨結合(オッセオインテグレーション)したインプラントが折れてしまっては、このインプラントを骨の中より取り出すことは困難になりますから、骨の中にない取り出しやすいねじ部で細く弱くして壊れるようにして、一番大事なインプラント本体を守っているのです。いわば、自動車のバンパーやトランクルームが潰れることで事故時に乗員を保護するような緩衝作用をねじ構造に持たせたわけです。2つ目にはインプラントを埋入して骨との結合を待つ間はインプラントに圧が加わるのを避けるためです。このためには、なるべくインプラントは歯肉から飛び出さないように、短くなるようにして、骨との結合を待って、後からインプラントにアバットメントを連結させれば良いわけです。このような標準的な治療法を2回法と呼びます。3つ目には、インプラントは骨のある方向に埋入しますが、上あご前歯などで歯を装着する方向は必ずしもこれと一致しないので、骨との結合を待ってから、角度付きアバットメントや個別アバットメントを連結するためです。

各社による改良

ここでは、特定のインプラントを批判するのではなく、万能のインプラントなどはこの世に存在しないこと、しかし、それぞれのインプラントを良くも悪くもするのは、術者がどこまで、経験しているかにかかっているのですよということを、患者さん方に解っていただくために記載いたしました。ですから、当然に他のインプラントについてもおいおい触れていきます。

インプラント表面と骨のオッセオインテグレーション後に、どのような機序で周囲骨の安定化が図られるか。

ブローネマルクシステム

ブローネマルクシステムでは、インプラントーアバットメントの境界部とインプラントショルダー(黄色)が一致しますので、骨の結合は、このインプラントショルダーより下になります。骨のくぼみがインプラントーアバットメント境界の周囲から下にあるわけですから、体液など水分が個々にたまり(赤色)、境界部から、インプラント内部へ侵入し、口臭等の原因となりうるリスクがあります。これに対する解決策は、医療機関により様々です。

この様な、ブローネマルクシステムの特徴(ある人は欠点とも呼びますが)を理解したうえでの施術が必要となります。

 

アンキロスインプラントとボーンレベル

アンキロスインプラントは、インプラントーアバットメントの境界部がインプラントの上面中央にあるために、インプラントショルダー部(黄色)にも骨がかぶり、上面から骨結合し、安定したティッシュインテグレーションが得られます。この機構を保証するためには、アンキロスインプラントは、4本の異なる直径のインプラントすべてに、同一の規格の細いアバットメントを使用しております。このために、ネック部での破折が皆無とはいえないのは事実です。また、上記の骨結合様式のために、インプラントショルダーまでラフサーフェス処理を施しております。

ankylos

  

本インプラントは、歯周組織とインプラントの位置関係がきわめて特徴的です。インプラントのプラットフォームの一部にまで骨が結合することを特徴としています。インプラント本体側面周囲のみならずに、上縁の一部(ラフサーフェス処理がされています)も骨結合の恩恵に与(あずか)り、アバットメントの歯肉貫通部も狭窄し極めて安定したティッシュインテグレーションが期待できるとしたシステムです。

すなわち、ブローネマルクシステムのインプラント(フィクチャー)が、アバットメント及び人工歯(上部構造)との接触境界部において広範囲に接触するために細菌等の侵入を容易にし、インプラントーアバットメント境界部周囲の骨吸収が必然的に発生する点を、ストロウマンは、審美性を犠牲にするリスクを承知の上で1回法タイプのインプラントとして、Astraは、内側ねじ(インターナル)として唾液や細菌の侵入を避け、インプラントーアバットメント間の結合をより緊密としているために、インプラント周囲炎や骨吸収に対して強いとされてきた。
しかし、Ankylosインプラントは、インプラントーアバットメント間の接触面積および接続様式の変更、インプラントプラットフォーム外周よりアバットメントとの接続部までの距離を十分にとることで、深部までのインプラント埋入を細菌感染のリスクを低減したうえで可能とした独創的なインプラントです。

   
   

2009.08.31更新